留学記 From Memphis, Tennessee

聖マリアンナ医科大学 腎臓・高血圧内科 谷澤雅彦

『2019年9月・10月レポート』

甚大な台風の被害をニュースで見るたびに、自然の脅威やこの数十年で大きく変わった気候変動に対して改めて無力感を感じ、外的な変化に対応するために常に(そしてecoで)進化と発展をしていかなければならないと思いました。また病院もこの自然の脅威に引き続く電気・水道系統を含めたインフラの断絶に著しく弱いものだと強く再認識し、もっと備えを充実させる必要があると感じました。被害にあわれ亡くなられた方のご冥福をお祈りします。
日本ではラグビーワールドカップ2019が非常に盛り上がっています。Brave Blossomsの活躍はもちろんですが、贔屓目で報道されているとは分かっていても、日本および日本人のおもてなしには、これらの報道を異国の地で見ると誇らしいものを感じます。今回のラグビーワールドカップではチームおよび日本の観客や大会運営サイドの立ち振る舞いから『日本人の強み』を再認識させてもらいました。忍耐、まじめさ、結束力、個ではなく集団、約束にcommitする力、etc。そして今後、世界で活躍するために日本人が必要となるであろう、行ってきたことに対する自信の持ち方およびその表現方法(謙虚にかつ静かに熱く)もBrave Blossomsより教えてもらった気がします。ありがとう!Brave Blossoms!!

さて今回はMemphisの文化について少し紹介します。Memphisは1800年台初頭にミシシッピ川を利用して様々な物資が運搬可能なことから、綿の一大生産拠点地として都市が形成されたとのことです。綿・南部と言えばアフリカ系アメリカ人が劣悪な環境下で多く働いていたことが容易に想像がつきますし、このような場所から公民権運動が発展していったことも想像に容易いと思います。観光スポットとしてキング牧師(Martin Luther King, Jr.)が暗殺された場所が国立公民権博物館として有名です。この後書いていますが、今回の長距離旅行で立ち寄ったLouisvilleはモハメド・アリの出生地で、彼も人種差別と闘ったアフリカ系アメリカ人の一人です。また、『しあわせの隠れ場所』というアメリカ映画の舞台がここMemphisでということです(心地が良いアメリカンサクセスストーリーですので是非一度見てください)。南部はこのようなアフリカ系アメリカ人の人種差別を背景としたスター達が必然として生まれる場所なのです。アメリカという国は非常に複雑で、人種・政治・宗教など、たかが1年強住んだだけでは理解することは不可能ですが(あまり政治のことは言いたくないですが)、ここMemphisは富裕層の白人、労働階級の白人、アフリカ系アメリカ人、その他のインド系やアジア系が様々な価値観で生きており、Tennessee州が共和党支持者が多い理由や、よそから来たアジア人の自分を最も暖かく受け入れてくれるのはアフリカ系アメリカ人だったりする理由を強く肌で感じた1年でした。この南部の雰囲気をとにかく口で説明するのは難しく、NYやLAなどを旅行した後にMemphisに立ち寄ると、この『雰囲気』が伝わるのではないでしょうか?その他Memphisといえばロックミュージック(エルビス・プレスリーの終の棲家やBBキングの経営していたクラブがある)、ミシシッピ川沿いはどこでもナマズ(Cat fish)料理、揚げ物、BBQ、そしてJack Daniel’sだと思います(留学記:2019年3月・4月レポート参照)。しかし、過去のレポートで書いたような、Jack Daniel’sの『男気』が、最近失われつつあることに私は嘆いています。『バーボン』を通り越して『テネシー・ウイスキー』と独自路線で名乗っていたのに、なんとRay麦を主原料とするシリーズを売り始めたこと、様々なフレーバーがあることが判明しました(シナモン、ハニー、アップル)。まぁ、昨今は多少ナヨナヨ・クヨクヨしていた方が『男気』よりモテるということで、許そうと思い、先日全ての試飲を制覇しました。 

   次は長距離旅行の話です。10月には子供のfall breakを利用して今回は“かなりの”長距離旅行に行ってきました。1,700マイル(約2,700km)を5日間で走破しました。さすがに車の運転はもうおなか一杯です。すでに18万キロを走っている9年落ちの日本のセダンは奇跡的に故障などのトラブルに巻き込まれませんでした。行った場所(宿泊した場所)はIndianapolis(インディアナ州)、Detroit(ミシガン州), Ann Arber(ミシガン州), Louisville(ケンタッキー州)です。途中にCincinnati(オハイオ州)にも立ち寄りました。普段Memphisの隣の郊外の町に暮らしている我が家からしたら、どこも大都市で、東京出身の自分でさえ圧倒された感じでした。我が家の目標である『Tennessee州に接している8州完全制覇』のためのケンタッキー州を今回は制覇することができました。現時点で残り、ジョージア州、ノースカロライナ州、バージニア州を残すのみとなりましたが、残り数か月でノースカロライナとバージニアは難しいと考えています(涙)。今回の旅行の目的は、Memphisで大変お世話になった日本人小児科医でアメリカで臨床をやられている先生がDetroitに引っ越されたので会いに行くことと、2か月前に日本から留学している名古屋時代の同僚と会うことでした。自分にない物を両先生が持ち合わせており、久々の再会は本当に楽しい時間で、ミシガンまでは遠かったですが、かけがえのないエネルギーをもらい、非常にpricelessな時間を共有させてもらいました。アメリカに来て日本人と会ってエネルギーをもらうとういうのは何か変な感じがしますが、ここでしか絶対に出会うことがなかった日本人の人達(それは医者だけではなく企業の方達も含め)との出会いは、本当にかけがえのないものだと思っています。また元々日本で知り合いだった人とアメリカでお互い留学中に会うというのも、過去・現在の戦友同士の再会のようで、その感激はひとしおです。今度は年末もしくは年始に、名古屋時代に一緒に働いていた外科の先生(アラバマ州)に会う予定を立てています。子供達はほとんどが車での移動でしたが、様々な事・物のMemphisとの違いを肌で感じてくれたと思い、親の自己満足として、今回の旅行は大成功としておきます。また、月並みですが、ケンタッキー州で食べるケンタッキーはとてもジューシーでおいしかったです(Memphisのケンタッキーとは本当に比べ物になりません)。またアメリカのケンタッキーには食べ放題のバイキングがあります!

 最後にアメリカに来て16か月間の『自身の心境』は、“やっと…”、という心境です。留学して16か月、最初に論文を投稿して7か月目にして、とうとうアメリカ発の最初の論文がacceptされました!肝腎同時移植の規模の小さいlocal cohort studyですが、研究計画を書き、自身でデータを集め、解析し産み出した、まるで我が子のような感覚です。“やっと”と書きましたが、“やっと『終わった』”ではなく、子育てと一緒で、“やっと『生まれた』、これからが本当の勝負”となると思っています。論文を出して終わりではなく、ここからさらに何を表現できるか、そして患者アウトカムを改善させることができるかを常に追求し、さらに精進していかなければ、と決意を新たにしていきたいと思います。ここまで毎日、何かしら英文を書き、論文の投稿作業、reject(かなりの数)されては再投稿、reviseで追加解析、revisionのコメントを書き、再度投稿を繰り返し、何やってるんだろ、、、と涙を流しそうになった日もありましたが、とりあえず結果が1つ出たので、精神状態を健康に保ちつつ、こういう地道な作業もやがて血となり肉となる、と思い楽しみたいと思います。 毎日1歩ずつ何かが進歩していれば、残り5か月(150日)のトレーニング期間で大きく成長できると信じて、とりあえず毎日を楽しみます。

次回はアメリカ腎臓学会2019@Washington DC.レポート、研究について+自身の心境(これは毎回)についてレポートする予定です。

投稿日:2019年10月29日|カテゴリ:未分類