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聖マリアンナ医科大学 腎臓・高血圧内科 神奈川県川崎市宮前区

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留学記 abroad-201901

留学記 From Memphis, Tennessee

聖マリアンナ医科大学 腎臓・高血圧内科 谷澤雅彦

 

2019年1月・2月レポート

アメリカで初めての新年を迎え、新しい気持ちで今年も楽しもうと思っております。
噂では聞いていたのですがアメリカの正月はあっさりと過ぎ去り、1月2日から通常業務が開始となります。驚くことに12月31日も基本的には通常業務であり、現地の人から聞くところによると気持ちの入れ替えの意識は日本人より薄い様子です。
アメリカ生活での最大の懸念であった食事の問題は早々に解決できており、また、元日に近隣に住む日本人医師の家族とhome partyを行い、お節料理を持ち合うことでかなり質の高い豪華な正月になりました。正直日本にいるときより日本食を食べています(毎日定時に帰宅し家で必ず食べるので)。
アメリカでは特に2019年について大きなイベントはなさそうですが、日本では元号が変わり、ラグビーワールドカップが開催される等大きな1年になることについていけるように、常に日本に向けてアンテナは張っていこうと思っています。

 

 

さて研究の話をさせて下さい。現在The University of Tennessee, Health Science Centerのpost-doctoral fellowの立場で留学をしています。
世界各地から職種を問わず(やはりインド・アラブ・中国・韓国が多い)ポスドク達が集まり、基本的に基礎研究を行っており、臨床研究で来ている研究者は非常に少ないと思います。
給料はボスのgrant(獲得資金)より捻出されており、NIH(National Institutes of Health:米国国立衛生研究所)基準にて支給されます。

 

 


 

 

正直日本にいたときの〇分の一ですので生活は厳しいですが、ここに来た理由が第一優先ですので贅沢を言っていられません(正直企業の駐在さんは米国ではリッチだと思います。指をくわえて羨ましく思っています・・・)。
特に自身で学費を払い公衆衛生教室や生物統計教室に入学した訳ではないので、系統だった疫学の勉強はしていません。行っていることは臨床研究のon the job trainingそのものです。
研究倫理やコンプライアンスについてのCITI training、患者個人情報の取り扱いについての規約であるHIPAA privacy (federal Health Insurance Portability and Accountability Act)をe-learningで受講し、簡単なテスト(でも量が多く意外と大変)をパスして初めて、電子カルテへのアクセスを手に入れることができます。
REDcapという非常に安全性の高いweb上でのデータ収集データベースを用いて、manualで入力する部分と、STATAと連動させてautomaticに入力する部分を分けて患者データを保管していきます。
今まで根性でやっていた作業を鑑みると、膨大なデータを効率よく集め、そのデータを統計ソフトを用いて一瞬で入力するという、今まで見たことがないような夢のような世界が展開され、非常に勉強になっております。臨床研究故、時に何もすることがない日も存在します(論文を読むなど以外)。
手を動かさない日が2週間くらい続くと焦り、虚無感、無力感などが襲ってきて、精神的にもアップダウンしていた時期もありましたが、最近はデータもほぼまとまり、やることが明確化されてきているので安定した毎日を過ごしています。

 

現在の臨床研究のテーマの最上流にあるのは腎移植であり、そのうち、肝腎同時移植における既存抗体・新規抗体の移植腎への影響、腎移植患者の予後予測スコアの外的検証(external validation)、肝移植患者の腎機能予後、C型肝炎死体腎ドナーからの腎移植後のレシピエントへのDAA治療とその効果について等、まさにon the job trainingで、背景情報収集→研究プラン(study proposal)作成→プレゼンテーション→データ収集→解析→論文作成を各々の研究がバラバラに進んでおります。
この7か月でデータ収集まではどの研究も終わったので、現在ボスと解析→論文作成を行っているところです。
正直統計知識も乏しく、初めて扱う統計ソフト(STATA)に悪戦苦闘しながら、ボスの手のひらで毎日1mmずつ進んでいる状況です。私の目標は統計専門家になることではありません。
大学病院に戻ったら当大学の性質上臨床に重きを置くこととなり(もちろんこの経験を活かし研究、教育も充実させる)、また自分の能力も鑑みて、このpost-doctoral fellowは臨床研究を遂行できるための『survival技術』を手に入れることを目標としています。
研究は自分一人で完結できるとは思っていませんし、こちらに来てから尚更そう思うようになりました。自分に必要なのは最低限の統計の知識、何がclinical relevantか、どのようにチームを組むか、役割の分担、どのように統計家と共同で研究を行うか、臨床研究倫理、そして『人間関係』が重要だと再認識しております。

 

アメリカは(尚更??)こちらがhard workすると正当に評価してくれて、かつ、認めてくれる国です。時にこんなおっさんに、なんでこんなに褒めてくれるの??と思うことさえあります。が、いつになってもやる気スイッチが入るものですね。
なんとか成果物が陽の目を浴びることができるように、引き続き頑張っていきたいと思います。そして、半年間一緒に働いたハンガリーからの同僚の女性医師が2月末でプログラムが終了し帰国します。
良い意味で典型的な外国人女性であり、自分の意見をはっきりと言い、強い人でした。彼女は今回の経験をもとに、再度アメリカに帰ってきて疫学を学ぶ、と決意を固めていました。
人それぞれ置かれている状況や能力が違うので、それはそれで尊敬しつつも、自分の将来についても考える重要な期間なのだと再認識しました。

 

 

日常生活について少し。1月の第三月曜日のMartin Luther King Jr. Dayを最後にしばらく祭日がなくなります。
子供は平日現地の学校、土曜日には日本語補習校があるのでなかなか旅行には行けない状況にあります。
その中でもサーカスキャラバンが来ればサーカスを見に行ったり(入場料はたったの5$、しかし象に2分乗るだけで15$、うまくできている・・・汗)、子供は友達の家に泊まりに行ったり、公園に行ったりと、非常に平和な日常を送っています。

 

 


 

 

子供と接する時間は日本にいたときの正直10倍!くらいあります。最初は一緒にいることが少なかった故に見ていなかった、ぐずり、駄々っ子、親の思い通りに行かないことにイライラすることも多かったですが、それは、こちらが親の役目を果たせしていなかったための耐性不足であり、猛省しました。
慣れてくれば対応がわかってきて、可愛いもんです(もちろん怒りますが)。働き方改革が叫ばれていますが、私も無尽蔵に働いてきた一人であり、こんな生活はアメリカに来ていなかったらできなかっただろうな、と思う今日この頃です。

 

もう一台の車も来て妻の行動範囲が広がっています。また次女も1月からchild careに行き始めました。全く泣かずたくましいです。
長女は学校で開催されているAR contest(Accelerated Reader:読書推進月間)にてクラス1位を取りました。
英語の本を読んで、その内容にPCを用いて答えるというものです。長女次女ともに家庭内で見ると、内弁慶でいささか心配が多い子達ですが、私の見立てが間違っていたと気づかされました。親の視野が狭く、むしろ子供たちの成長や努力に置いて行かれていると。
子供たちを誇りに思うとともに、私自身も親として・医師として・研究者として成長をするということを2019年の抱負としたいと思います。

 

最後にアメリカに来て8か月間の『自身の心境』は、“仕切り直し”、という心境です。
昨年はもちろんアメリカでの初めての生活のための激動の半年であり、『落ち込み』→『喪失感』→『開き直り』とアップダウンしていました。
生活も8か月が経過し、かつ新年を迎えて、論文作成という目に見える作業があるために、現在はかなり前向きに考えられるようになっています。
まだ1年以上ありますので、山あり谷ありだとは思いますが、上に向かいながらの山あり谷ありなら、少なくともgoalは今よりも高い位置にあると信じて、日々楽しみながら生活したいと思います。

 

毎日1歩ずつ何かが進歩していれば、残り13か月(390日)のトレーニング期間で大きく成長できると信じて、とりあえず毎日を楽しみます。
次回はお酒とアメリカンスポーツについて+自身の心境(これは毎回)についてレポートする予定です。

 

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